2019年11月13日~16日
タイ(バンコク)
株式会社勝島経営研究所ビジネスカツシマ
引率者 勝島一真 金子剛
1.はじめに
空港から高速でホテルへ向かう途中、車窓から見える景色に何故か違和感はありません。東京の街並みとほとんど同じような景色が広がりました。所々に高層ビルが立ち並び、車も日本車が本当に多く、違うとすれば古い車は走っていないところでしょうか。やはり貧富の差は相当大きいようです。高速道路から降り、一般道へ入ると通勤帰りの若者たちがバイクでさっそうと走っていました。しかし、ベトナムのバイク数と比べるとはるかに少なく車社会が浸透しているようでした。中心街は欧米人も混じり非常に賑わっていました。タイ料理はもちろん日本料理等さまざまなレストランが並び、繁華街のナイトマーケットではおもしろいTシャツからアクセサリー、偽物らしきバッグ等々所狭しと露店が並んでアメ横みたいな感じがしました。値段はもちろん交渉次第ですが極端に安くすると嫌な顔をします。かなり慣れている様子。ゴリ押しまではしてこない感じでした。オープンな演奏を聴きながらお酒を飲んでいる人達も多く、まさにアジアにいるという実感。また、宿泊ホテルの応対は非常に良い印象でした。こちらの質問に常にゆっくりと笑顔で答えてくれるのが心地の良い感じがしました。ただ部屋にホテルのインフォメーション関係が見当たりませんでした。今はこれが普通なのか、フロントに電話をするにも番号がよくわからないので下まで行って尋ねたりしました。備品も日本ではあるものがなかったり結局持ってきてもらいチップを渡すことになりました。そういうことなのか、たまたまなのかよくわかりませんでした。部屋そのものはかなり豪華な感じで屋上には専用プールもありました。初日はほとんど移動で終了しました。
2.視察先
◆APAMAN JOHO(T.W.Y.Co.,Ltd.) ~不動産業~
◆J-Will Internatiоnal Co.,Ltd ~投資、コンサル~
◆SBCSカンパニーリミテッド ~金融~
◆SAIAM Takashimaya ~日本百貨店~
◆日本料理店 味匠 ~MISHO~ ~飲食業~
◆APAMAN JOHO(T.W.Y.Co.,Ltd.) ~不動産業~
まず最初にT.W.Y.Co.Ltd.を訪問し、タイ・バンコクについていろいろお話を聞くことができました。代表は30年以上バンコクで不動産関係の仕事をされており、表裏様々な情報を持っている方です。当初お弁当販売からスタートし、今では日系企業のマンション仲介から不動産売買・資産運用と幅広く活躍されています。バンコクでは現在「ワンバンコク」のような20万㎡くらいの巨大プロジェクトがいくつも動いているようです。日本では1つあるかどうかを考えるとかなりの違いがあります。ただ中国経済の影響等が大きいタイでは、工事状況を見る限りでは急ピッチに進んでいるとは感じられませんでした。
タイで事業を始めるにはいろいろな規制があります。出資ではタイ人が51%以上保有しなければならず、円滑な事業展開にはやはり信頼できるパートナーが必要となります。タイ人の大卒初任給は約10万円弱で昔に比べれば生活水準がかなり上がり、物価は、日本の4割弱くらいになるのではないでしょうか。日本から不動産投資の話もかなりあるそうですが、日本人は8~10%の利回りを望み、ほんの数%の利回りの差でストップになるケースも多々あり、その点タイ人のそれ程気にしない性格と大きな違いがあります。利回りが小さくとも保有による売却益でペイするというスタイルがタイでは一般的なのかもしれません。
日本人からするとより早くより大きくを望んでしまいますが、何となく納得してしまいました。今後タイで事業を展開する時の注意点などのお話もいただきました。
◆J-Will International Co.,Ltd ~投資,コンサル~
続いて2015年にJ-Will Internationalグループのタイ法人として設立されたJ-Will International(Thailand)Co,Ltd.を訪問しました。バンコクを拠点としてASEAN各国への投資やコンサルタント業務を行っており、マネージングディレクターの方からお話を聞きました。
タイのGDP成長率はアセアン諸国の中では4.1%と低い方ですが、日本の0.8%と比べればかなり高くなっています。1人当りGDPではタイは7,274ドルで日本で言えば1970年代後半に相当するそうです。ちなみに中国は9,771ドルで日本の1980年くらいになるようです。
タイは格差が特に激しく、所得が約100万円未満92%(2018年)と非常に多く、税制面でも親族で約7,000万円を超えなければ贈与税がかからないため金持ちは常に金持ちであり続けるという状況を作っているようです。タイ人は、どちらかと言えばよい越しの金は持たない的で、貯蓄性向も低いと言われています。
過去に通貨危機があったため現金を信用しておらず実物資産(金等)で所有する傾向があります。タイでは仏教徒が95%と非常に多く、個人の付き合いが基本となっています。インターネットの利用は世界一と言われており、仕事はLineで取引先ともLineで行うそうです。その他タイの今後についていろいろ聞くことができました。
◆SBCSカンパニーリミテッド ~金融~
最後はQ.Houseルンピニビル16FにあるSBCSを訪問しました。
三井住友フィナンシャルグループで資本金は140百万バーツ(約5億円)の会社です。ビジネスプロモーション部門マネージャーからタイの概況について説明していただきました。
中でも印象に残る点がいくつかありました。
1つ目は、都市鉄道がどんどん伸びていることです(12月5日にも新たにライトグリーンライン開通)。乗客数が増加し、それに伴いマンション等の不動産開発も益々進んで行くようです。
2つ目はタイ経済で最も重要な自動車についてです。国内販売は2019年見込みで100万台(前年104万台)、輸出では前年比1割減の100万台といずれも減少が見込まれています。
オーストラリアへの輸出が意外にもカーシェア等の影響により落ち込んでいるとの事でした。
3つ目は労働者不足についてです。タイの失業率は2018年で0.9%(日本では2.4%)とかなり低く、なかなか採用も厳しい状況で、周辺のミャンマー等からの出稼ぎ労働者を受け入れています。視察中もトラックの荷台に労働者がたくさん乗っている場面に遭遇しました。3Kの仕事はやらない、エビの皮むきはやらない等段々日本と似てきているようです。その他6年間で1回の停電しかない等インフラの現状、日本食について等いろいろお話をいただきました。
◆SAIAM Takashimaya ~日本百貨店~
バンコク最大のショッピングセンターで巨大な駐車場を完備し、日本企業が数多く入っているSAIAM Takashimaya。30℃のバンコクでしたが、例えばユニクロではダウンジャケットが約2500バーツ(約9,000円)で販売されていました。冬に向う訪日客用ということなのでしょうか。フードコートはもちろん、物産展、アミューズメント、コンビニ、両替所等々何でもそろった大百貨店ということができます。ちょうど手持ち現金がなくなってしまったためATMでキャッシングサービスを受けてみました(ViSAカード)。何台か試したのですが、慣れない海外のATMとそもそも対応機種でないことのために何度か失敗しました。しかし、UOB(United Overseas Bank)のATMでようやくサービスを受けることができました。ただ1,000バーツ借りるのに220バーツのフィーが取られていました。かなり高い率(22%)ですので緊急時以外は使用しない方が良さそうです(ちなみに日本でも年15%の期間利息が引落されました)。
地下では観光客向けに伝統的なおどりが披露されて楽しませてくれたり、タイ式マッサージやもちろんおみやげ、屋台もたくさんありました。ここだけでも1日費やしてしまう程の大きな規模でした。
◆日本料理店 味匠 ~MISHO~ ~飲食業~
最終日の夜ちょうど日本食が恋しくなる頃、バンコクでも一等地にある日本料理店「味匠」にて現地で活躍されている経営者の方々と交流会が行われました。オーナーはタイ王室にもっとも近い日本人と言われている方で、食材はすべて日本から輸入するという徹底ぶりです。上品に盛られた刺身は日本で食べるよりもむしろ美味しい感じがしました。食事の最後には日本そばで締められ一瞬私たちはどこにいるのだろうと思いました。お酒も通常は日本酒と思われますが、今回は特別なワインを勧められました。フランス人が厳選されたブドウを使ってタイで生産しているものでスッキリとした味わいの高級ワインという感じでした。訪日客が激増しているタイでは日本で本物の日本料理を堪能して帰国するため、よりハイレベルな味を求める客層もかなりあるようです。
もう一人の方は住居をタイ第二の都市チェンマイに置き、会社は香港にあるというまさにアジアを飛び回る経営者です。バンコクではやはり物価が高いため、人口約20万人のチェンマイはリタイヤした日本人が非常に多く、古都京都のような人気の都市であるようです。日本の健康保険もあとで使えるなど高齢者にも安心です。
交流会では30年以上の経験をもとにタイにおけるビジネスの展開方法、自動車・重機・食品・不動産等多岐に渡っていろいろな角度からお話をいただきました。
3.おわりに
今回のバンコク視察を終えてタイが予想以上に成熟している国だと思いました。政治的な不安は多少あるものの2036年までの長期計画のもと先進国への仲間入りを着々と目指しているところはあまり知られていないのかもしれません。
また、20年後には少子高齢化が問題になったり、極端な貧富の差など日本と似た諸問題も現実的にはあるようです。ただ、男女を問わず話しかけると必ず笑顔を返してくれるところに一番のタイの魅力を感じました。